|2024年3月27日|空調タイムス掲載

【愛知】地中熱利用の普及促進を目的とするセミナー開催

2024年3月18日に中部地中熱利用促進協議会主催にてセミナーを開催いたしました。

佐賀県と大阪市より講師をお招きし地中熱利用における先進的取組を紹介させていただきました。自治体でない聴講者の方々にも自治体の方がどのようなことに悩まれ、工夫されているかを知っていただける良い機会となりました。

今後も地中熱利用の普及・促進に向け活動を継続してまいりますので、引き続きご支援いただきますようよろしくお願いいたします。

【記事内容】中地協がセミナー

自治体による地中熱利用を紹介 佐賀県と大阪市の先進的取組

【愛知】中部地方での地中熱利用の普及促進を目的とする中部地中熱利用促進協議会(中地協)は18日、ウインクあいち(名古屋市)で「温暖地域における自治体の地中熱の取り組み」と題したセミナーを開催した。地中熱利用を積極的に進めている佐賀県と大阪市から招いた講師による、各自治体の取組に関する講演が行われた。

初めに同会・理事長の大谷具幸氏(岐阜大学・教授)が登壇し、「自治体による取組は、その地域の先導的な役割を果たされるということで、大変重要なこと。一方で、税金の効率的な利用など、自治体特有の難しさもあり悩まれていると思う。聴講者におられるほかの自治体の方にとっては大いに参考になり、自治体でない聴講者の方々にとっても自治体の方々がどのようなことに悩まれて、工夫して取り組んでいるのかを知ることができる貴重な機会になる」と挨拶した。

佐賀県の取組に関する講演では、はじめに佐賀県産業労働部再生可能エネルギー総括監の大野伸寛氏が登壇した。大野氏は、カーボンニュートラルの実現に向けた取組として、エネルギーの効率的な使用(未利用熱の利用)を最も優先すべきものとして挙げ、佐賀県では、県内の再生可能エネルギーの中でもエネルギー需給のギャップが少ない地中熱に着目したと説明した。地中熱の普及には、高額な導入コストと知名度の低さが課題であるとし、県内の率先導入事例を創出するべく、まず佐賀平野の地中熱ポテンシャルマップを作成。その後、佐賀平野に所在するスポーツ用施設「SAGAアリーナ」「SAGAアクア」に地中熱利用設備を導入した。現HDD(水平比開削)工法による掘削コスト削減等の検討を進めている。​

次に、地中熱ほか熱エネルギーの普及促進を目的する一般社団法人有明未利用熱利用促進研究会の原田烈理事(バイオテックス・代表)が登壇し、佐賀平野での農業における地中熱利用の事例を紹介した。また原田氏は、地中熱利用はZEBの実現にも有利であるとし「佐賀県をはじめとする温暖な地域では、特に改修でZEBを実現する際には、断熱改修を行うより地中熱空調システムを導入する方がコストを抑えられる場合も多い。温暖地域での地中熱の価値が今後高まってゆくのでは」と説明した。​

続いて大阪市環境局環境施策部エネルギー政策担当課長代理の大谷直人氏が登壇し、大阪市での地中熱の活用に関して講演を行った。大阪市は、熱需要の高い中心部の地下に豊かな帯水層があり、帯水層蓄熱のポテンシャルが高かったことからオープンループ方式の地中熱利用の実証事業を実施していると説明。オープンループ方式では、地下水採取による地盤沈下を防ぐため、各自治体が条例で採取量を規制しており、実証では地盤の変位量も確認している。大谷氏は実証事業として①うめきた②舞洲③大阪・関西万博の3件の取組を紹介した。うめきたでの帯水層蓄熱システムの実証では、約2年間の運用で地盤沈下は見られず、その結果をもって地下水採取規制の緩和を内閣府に提案し、一定の条件下で緩和が認められている。大谷氏は、大阪市は現在、地中熱活用の全国的な普及と更なる地下水採取規制緩和に向けて地下水・地盤データを蓄積していると紹介した。